今月はあまり読めなかったが、コレは月末までに読了できてよかった。

「破獄」 吉村昭 著~。

昭和11年青森刑務所脱獄。

昭和17年秋田刑務所脱獄。

昭和19年網走刑務所脱獄。

昭和22年札幌刑務所脱獄。

四度の脱獄を実行した無期刑囚 佐久間清太郎を描く作品。

 

タイトルもカバー絵も、重苦しい感じで1ページ目が開きにくいなぁ・・・。

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ところが一旦、読み始めるとスイスイ読める!、面白い!。

登場人物は架空ながら、作品のベースになった脱獄劇は実際にあったといいます。

昭和の激動期における刑務所の様子が、ナマナマしく描かれている。

戦時の経済統制下であっても刑務所の囚人たちには、一般市民より多くの食糧配給があった。

理由は配給量を増すことで刑務所内の不平不満を抑える為、そして囚人による過酷な軍需目的の工事労働の為。

そして、極寒の網走刑務所独居房では、囚人の息で壁や布団が凍結するという描写にリアルな寒気を感じます。

オモテには表れない赤裸々な歴史記録の一面。

佐久間清太郎が収監された各刑務所が脱獄させまいと躍起になるものの、超人的な知力・胆力・気力・体力で看守たちを嘲笑うかのように、こつ然と姿を消す場面に少し爽快感を感じたり~。

また反対に、佐久間と心を通わせようとする警官や看守、刑務所所長とのやり取りにシンミリとします。

 

戦前・戦中・戦後の記録としても、人間ドラマとしても味わい深い作品です。

佐久間清太郎は、違う方向に自らの能力を行使すればよかったのにな・・・。

極限状態が、超人的能力を覚醒させたのかも。