「五重塔」 幸田露伴

技量はありながらも小才の利かぬ性格ゆえに、「のっそり」とあだ名で呼ばれる大工十兵衛。

その十兵衛が義理も人情も捨てて、谷中感応寺の五重塔建立に一身を捧げる。

エゴイズムや作為を越えた魔性のものに憑かれ、翻弄される職人の姿を描く、文豪露伴の作品。

 

新聞コラムで薦められていたので、読んでみようかな~とお気軽モードでページを開くが・・・。

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其一 木理美しき槻胴、縁にはわざと赤樫を用ひたる岩畳作りの長火鉢に対ひて話し敵もなく唯一人、少しは淋しさうに坐り居る三十前後の女、男のやうに立派な眉を何日掃ひしか剃つたる痕の青々と見る眼も覚むべき雨後の山の色をとどめて翠の匂ひ一ㇳしほ床しく、鼻筋つんと通り目尻キリリと上り・・・。

 

旧かな、文語文で読みにくい。(1892年の作品)

3ページ目あたりで、一旦停止。

シマッタ!積読本を増やして?しまったか・・・と思ったが、半日空けて仕切り直して、寝る前に読んでみました。

読みにくいのは変わらずだが、話の展開が速く、先の予想をコトゴトク裏切られ、どうなるのか?とハラハラドキドキで読み終えました。

物語の時代背景と、この文体がとても合っているのでした。

臨場感が増し、その場に居合わせたような感覚になります。

特に、後半の天変地異描写がとても怖かった。

いきなり災害の現場に放り込まれたような錯覚に陥る・・・。

 

昔も今も変わらない登場人物の人情、喜怒哀楽や、心理描写が興味深い。

コラムにあった通りに、文庫本は薄いが中身は濃いのでした。。