「深海の使者」 吉村 昭

先日の「戦艦武蔵」と、同時に求めた本です。

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昭和17年から19年にかけて日独間の連絡手段としてインド洋~大西洋を航海した潜水艦と乗組員の記録。

巻末の航路図を見ながら無事に補給地点や目的地に着いたことに安堵し、悪天候や敵襲を避ける海中の場面では、マサに息を潜めていました。

潜水艦だけに陽の光を浴びれない、狭い空間、艦内に溜まる炭酸ガス、飲料水の制限、入浴できないので艦内に漂う?異臭、そしてなにより怖い敵襲・・・隠匿行動なので外部のバックアップをほとんど受けられない・・・と、考えただけでもどうにかなってしまいそうなことばかり。

でも幸い、食料は足りていたようです。(缶詰ばかりだが)

緊張場面の連続だが、敵襲で浸水した!と報告があったが調べてみると、保管されたビールが割れて中味が出ただけだったり、また、ドイツ人乗組員にカレーライスを振舞うところにホッコリです。

 

とても優秀な乗員に操られた、とても優秀な兵器ではあったが、潜水艦は敵を果敢に攻撃する・・・より、海の中を行く輸送船的な役割が多かった。

その意味ではとても活躍したことになりますが。

 

遣独潜水艦作戦として第5次まで派遣されたが、徐々に制空権・制海権を失う中で、完全な成功を収めたのは第2次遣独伊8号艦のみ・・・。

優秀な乗員と共に当時最新の電子機器やジェット推進機の技術者も、ドイツから持ち帰ろうとしたサンプルも海中に没してしまった。

著者の作品は、全て関係者への綿密な取材をもとに描かれていて、とてもリアルで臨場感があります。

ただし、時が経って取材対象者が減ってしまったために、戦記モノは本作が最後らしい。(でも40年以上前の作品)

 

戦後70年となった今年に、このような作品に巡り会えたことは~何か意味がある?かも。