「アメリカ素描」 司馬遼太郎

書店で何気に手にした一冊。

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街道をゆくアメリカ版?ってニューヨーク編があったような・・・かなり前に読んでいましたね。

多くの歴史文学を著わした著者は現代アメリカをどうみたか?。

そして、アメリカってどんな国なんだろう?という素朴な疑問があります。

「司馬遼太郎」はその国をどのように見て、感じて、スケッチしたか?に興味が湧きました。

現代・・・といっても本書は今から30年程も前のアメリカの姿が描かれているが、本質は変わらないと思って読みだす。

本書カバーも著者が描いたというのは読み終えてから知ったのでした・・・。

 

・・・アメリカ人がよく自国のことを、「ザ・ステイツ(the States)とよんでいることに関心があった。

合衆国という略語である、といってしまえばそれでしまいだが、私の感覚には語感として、「アタシの人工的な国家は」といっているように、ついひびいてしまう。

法でつくられたる国というひびきである。

言いかえれば、文明という人工でできあがった国ということばにちがいない。

逆にいえば、韓国やアイルランドや日本のように文化の累積でできあがった国は、Stateではない。

人間は群れてしか生存できない。その集団をささえているものが、文明と文化である。いずれもくらしを秩序づけ、かつ安らがせている。

ここで、定義を設けておきたい。文明は「たれもが参加できる普遍的なもの・合理的なもの・機能的なもの」をさすのに対し、文化はむしろ不合理なものであり、特定の集団(たとえば民族)においてのみ通用する特殊なもので、他に及ぼしがたい。つまり普遍的でない。・・・・(P.17~18)

冒頭で主な内容が描かれているような気がする・・・。

 

日露戦争の行方を決定付けた日本海海戦を戦った両国の艦艇の一部が、フィラデルフィアの造船所で同時期に作られていて、そこには日本人技師もいたという「坂の上の雲」の裏話がオモシロイ。

 

本書が出てから30年の間に、日本・アジア諸国の経済的台頭や湾岸戦争を始めとする中東地域での戦争、9.11テロ、リーマンショック・・・アメリカは、そして世界中も混沌の中にあるのだが、依然として世界はアメリカ中心に動いている。

その根っこ部分を垣間見れたような気がします。

超経済大国、現代文明の象徴、資本主義経済・金融の中心・・・なんだかんだ言っても、今だに憧れをもって見ることの多いアメリカ。

当然、明るい面があれば暗い面もある。

 

30年前の本ながら読み応えあります。

著者が巡った場所だけでも訪れてみたい(アメリカ素描ツーリズム)。

本書のおわりに「田舎の三年、京の三日」(刺激が違う)という、ことわざが紹介されていましたね~。

 

意図したワケではないが、本日(2月12日)は司馬遼太郎忌だった。