「御馳走帖」 内田百閒 著

朝はミルクにビスケットに果物少し、昼は正午ジャストに、かけ蕎麦またはもり蕎麦、夜は山海の珍味に舌鼓をうつ、食いしん坊の百閒先生が幼年時代の思い出から戦時中の窮乏生活、友人との食膳の楽しみ等、愉快に綴った食の随筆集。

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これを読みだしてから、ランチに蕎麦を食べる機会が更に増えました。

また、百閒先生は小学校に上がる前から喫煙習慣があったという驚愕の事実が発覚。

その後、「未成年禁煙令」が発布されて規制されるようになったというが、百閒先生は禁煙することなく吸い続けたという・・・。

 

「餓鬼道肴蔬目録(がきどうこうそもくろく)」という一節です。

昭和十九年ノ夏初メ段段食ベルモノガ無クナツタノデセメテ記憶ノ中カラウマイ物食ベタイ物ノ名前ダケデモ探シ出シテ見ヨウト思ヒツイテコノ目録ヲ作ツタ

さはら刺身 生姜醤油・・・塩ぶり・・・オクスタン塩漬・・・ポークカツレツ・・・カビヤ・・・竹の子ノバタイタメ・・・馬鈴薯ノマツシユノコロツケ・・・油揚げノ焼キタテ・・・日米堂ノヌガー・・・上方風ミルクセーキ・・・やぶ蕎麦ノもり・・・富山ノますノ早鮨・・・と延々と続くのでした。

読みながらヨダレが出てきますが、この目録が書かれた当時は入手困難なものばかりで、その心中は如何ばかりであったものか・・・。

 

そして、麦酒~という言葉があちこちに登場します。

昭和20年7月でも麦酒の配給があったとありますから、窮乏生活の中にもささやかな楽しみがあったのですね。

 

現代はとてもいい時代です。