「東京に暮す」キャサリン・サンソム著 大久保美春訳

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イギリスの外交官である夫ジョージ・サンソムの赴任に伴って来日したキャサリン・サンソム(1883-1981)が昭和初期(1928年~1936年)の東京の街と人々の暮しを軽妙な筆致で描いた日本印象記。(本書カバー)

 

日本が徐々に国際的孤立感を深めていく時代背景にあっても、あたたかい眼差し、冷静な目で日本を見ています。

・・・しかしなんといっても日本人の最大の特徴は自然と交わり、自然を芸術的に味わうことです。(中略)農民の仕事はとても大変なのに彼らは自然と格闘しているようには見えません。彼らは、むしろ、成長しては滅びることを繰り返して永遠に再生し続ける自然界の一員であり、そしてまたこの循環のあらゆる過程を美しいものとして味わうことができる優れた感受性を持っている人たちなのです。(P.43)

著者友人のイギリス人画家マージョリー西脇が描いた、表紙や本書中のユーモラスな挿し絵も、当時の様子を知る上で興味深く楽しい。

 

西洋と東洋とはお互いに相手が必要とするものを理解し、相手の考え方に注意を払うようになってきました。また分別がある人たちの活躍のおかげで、各民族が持っているつまらない虚栄心が徐々に消えつつあります。二十世紀人類は、東洋人も西洋人も一緒に笑い、語り、学ぶことで、先輩たち、半世紀前に出会って親しくなった進取の気性に富んだ先輩たちの努力の仕上げをしなくてはならないのです。(P.256)

・・・巻末はこのように結ばれていますが、残念ながら史実は、筆者の思うようにはならなかった・・・。