「不道徳教育講座」 三島由紀夫

書店でタイトルに目が行き、三島由紀夫なら面白いだろう~ということで読み出す。

不道徳を推奨する?エッセイ集。

「大いにウソをつくべし」「約束をまもるなかれ」「沢山の悪徳を持て」・・・等々。

 

・・・著者一流のウィットと逆説的レトリックで展開される論の底に、人間の真実を見つめる眼が光る。・・・(本書カバー)

 

当初はタイトル通りに不道徳を勧めていたが次第に道徳が強調されていました。

全く、不道徳では無くなっています。

著者も最終講「おわり悪ければすべて悪し」で、その反省?を述べています。

 

それにしても、1959年(昭和34年)に刊行された本ながら、現代社会を予言したような内容が驚異的!。

 

・・・「要らなければ、スイッチをお切りなさい。ほしくなければ、この雑誌や新聞を買わなくてもいいんですよ。われわれはただ、そちらから手をのばして、テレビやラジオのスイッチを入れ、新聞や雑誌を買って下さる方にだけ、話しかけているのですから」・・・(P.282)

これは、自分にとって都合のいい、欲しい情報だけを選択できるということ。

ネットメディアを暗示しているような気がします。

 

・・・流言蜚語(ひご)が、どんなラジオのニュースよりも早い伝播力と強い影響力をもつのは、それらが「言葉」そのものだからです。つまり流言蜚語というものは、事実の側に立つよりも、われわれの心の中の希望や不安の側に立っていることが多く、そういう希望や不安にうまく訴えるように出来ているからです。・・・(P.285)

フェイクニュースを信じてしまう状況を鋭く突いている。

 

また「催眠術ばやり」では、テレビに入れる「見えない広告」~サブリミナル効果の内容もありました。

 

昔も今も、人間の不道徳?やる事なすことは、ほとんど変わらない。

 

著者が現代社会を見たら・・・どのように「不道徳教育」を語るのだろうか?。