「最悪の将軍」 朝井まかて

・・・生類憐みの令によって「犬公方」の悪名が今に語り継がれる五代将軍・徳川綱吉。その真の人間像、将軍夫妻の覚悟と煩悶に迫る。民を「政の本」とし、泰平の世を実現せんと改革を断行。抵抗勢力を一掃、生きとしし生けるものの命を尊重せよと天下に号令するも、諸藩の紛争に赤穂浪士の討ち入り、大地震と困難が押し寄せ、そして富士山が噴火—。・・・(本書カバー)

 

度重なる地震と大火による世情不安に、追い打ちをかけるような富士山の噴火に、流行り病とは・・・マサに踏んだり蹴ったり状態。

世論は政治が悪い!将軍のせい!ということになるのは、世の常か・・・。

 

最近の歴史研究によると、徳川綱吉治世~の見直しが行われています。

赤穂浪士討ち入りも美談?見方によってはクーデター?ともなるが、世間的には上手くとりなすことができた。

生類憐みの令」も、世界に先んじた動物愛護の思想です。

 

・・・「扶桑の民はいかなる災厄に遭うても、必ず立ち上がる」また咳が出て息が乱れる。信子(御台所)と小姓らに介添えされて、横になった。「強き、愛しき民ぞ」喘ぎながら言葉を継ぎ、目を閉じた。心の底から満ち足りていた。・・・(P.320)

 

・・・「我に、邪(よこしま)無し」・・・(P.328)

 

現代日本へのエールとも・・・。

 

そして、犬にまつわる巻末も秀逸。