「草枕」 夏目漱石

・・・山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に掉(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画(え)が出来る。人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。矢張り向う三軒両隣りにちらちらする唯の人である。唯の人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりも猶(なお)住みにくかろう。・・・

 

日経紙連載中の「ミチクサ先生」の場面を思い起こしながら読み進める。

「ミチクサ先生」を読んでいなかったら、本書を手にすることはなかったかもしれません。

主人公は漱石自身?。

文中は漢文、謡曲、古典、絵画~の注解が多く、ページを行ったり来たりしながら読むので、意外と時間がかかります。

明治期の読者層は、教養あふれる方々ばかりだったのですね・・・。

 

明治~大正期が背景の文学作品が好きです。

好き・・・というか、ゆったりと時間が流れる雰囲気がいい。

また、映像等が残っていることもあり、幕藩期以前より時代背景が想像しやすいこともあるからでしょうか。

実際は、衛生環境・食糧事情等々~何かとタイヘンだったと思います。

格段に、現代の方が住みやすいのかもしれないが~郷愁?憧れ?のようなモノも感じたり~。

文学作品だからなのかもしれないが。

 

 

「兎角に人の世は住みにくい」・・・は、当時も現代もそんなに変わらない?。