「黒い海」船は突然、深海へ消えた 伊澤理江

・・・第2管区海上保安本部(宮城県塩釜市)に入った連絡によると、23日午後1時30分ごろ、千葉県犬吠埼灯台の東約350㌔沖の太平洋で、巻き網漁船第58寿和丸(135㌧、乗員20人)が転覆した。船体は沈んだ可能性が高い。僚船が引き揚げた7人のうち4人の死亡が確認され、3人は無事で、13人が行方不明になっている。現場付近にいた僚船が捜索している。(2008年6月24日 朝日新聞朝刊)・・・

 

ノンフィクション~実話です。

生存者の証言に基づく、第58寿和丸が突然の転覆~救助に至るまでの描写が生々しい。

読み手も、重油が漂う「黒い海」に、いきなり放り込まれる・・・それ以前にワケがわからないまま、船内に取り残されてしまった行方不明者もあるのだが・・・。

 

第58寿和丸が所属する、いわき市小名浜の酢屋商店と野崎社長も漁船遭難の対応に追われます。

そんな中でも、容赦ない報道陣からの取材攻勢に怒りを感じました。

このような大変な出来事があったにも関わらず、わずか3年後に東日本大震災と、それに伴う原発事故が発生。

さらには現在まで続く「汚染水海洋放出問題」が、福島県漁連漁連会長でもある野崎社長に降りかかる~まさにこれでもか~これでも~と、理不尽な災い・問題が次から次へと降りかかる。

このような現実が続いたら・・・堪えられず何もかも投げ出したくなるでしょう。

 

「世界は人間の理性を超えている、それだけのことなのだ。」アルベール・カミュ『シーシュポスの神話』(本書冒頭)

 

本書が突き止めつつある?「真実」はかなり衝撃的でしたが、同時に野崎社長の人間ドラマに引き込まれていました。

アルベール・カミュ・・・読んでみようかと思う。(読めるのか?)

 

不条理・理不尽~を受け止められるのか。