「ファシズムの教室」なぜ集団は暴走するのか 田野大輔

 

ファシズム

・・・「なぜ人は、大勢の仲間がいると、過激な言動ができてしまうのだろう。いじめ、ヘイトスピーチ、ネット上の私刑・・・。戦時中は、隣人同士でお互いの言動を監視し合っていた。不寛容な空気が、今の日本にも漂っていないか。その正体に少しでも近づきたいと思い、ある大学の体験学習に参加してみた」

この授業では、学生が一斉に「ハイル、タノ!(タノ万歳!)」と叫んでナチス式の敬礼をし、笛の音に合わせて教室やグラウンドで行進や糾弾をおこなうのだという。教師扮する指導者のもと、独裁体制の支持者と化した学生たちが、同じ制服を着てファシズムのような示威行動をくり広げる授業。それが「ファシズムの体験学習」である。・・・(はじめに)

 

こんな変わった~というか、アホな授業を行なうなんて~と疑心暗鬼で読み出す・・・というか、買うんじゃなかった!の気持ちが大きい。

指導者役のタノ~は著者本人です。

実際に賛否両論の授業ながら250名もの受講生がいることが驚き・・・。

制服~といっても、白いワイシャツにジーンズで、敢えて授業のアイコン的にナチス式敬礼を取り入れ、集団目的は「リア充」糾弾?~ですから、ファシズムのさわり疑似体験と偏向しないようにフォローしながらの授業のようです(「リア充」カップルはサクラ・・・)。

集団行動、制服、指導者に服従・・・これは、学校生活に始まり~社会に出て、働きだしても続いている「普通の生活」だということに気づく。

 

・・・「ファシズムの体験学習」から得られる最も大きな教訓は、ファシズムが上からの強制性と下からの自発性の結びつきによって生じる「責任からの解放」の産物だということである。指導者の指示に従ってさえいれば、自分の行動に責任を負わずに済む。その解放感に流されて、思慮なく過激な行動に走ってしまう。表向きは上からの命令に従っているが、実際は自分の欲求を満たすことが動機となっているからだ。そうした下からの自発的な行動をすくい上げ、「無責任の連鎖」として社会全体に拡大していく運動がファシズムにほかならない。・・・(P.183)

 

思い返してみると、身近にも思い当たる節が・・・在ったような無かったような~。

 

この体験学習は10年間続いたものの、内外からの様々な意見や、大学当局と一部政治的影響?もあり2019年に終了しました。

疑似体験することで、ファシズムへの危機感を察する感度を鋭くすることができると思います。

終了せざるを得なかったということは~、社会が妙な方向に向いつつあるのかも?。

 

冒頭に本書批判の気持ちを書いたが~ファシズム理解の入門書としては読めてヨカッタ(と思ふ)。