「マスク」 スペイン風邪をめぐる小説集 菊池寛

・・・スペイン風邪が猛威をふるった100年前。作家の菊池寛は恰幅が良くて丈夫に見えるが、実は人一倍体が弱かった。そこでうがいやマスクで感染予防を徹底。その様子はコロナ禍の現在となんら変わらない。・・・(本書カバー)

表題の「マスク」「神の如く弱し」「簡単な死去」の時代背景は同じかと思われます。

流行性感冒(インフルエンザ?)が絡む人生の悲喜こもごも。

・・・自分は、極力外出しないようにした。妻も女中も、成るべく外出させないようにした。そして朝夕には過酸化水素水で、含漱(うがい)をした。止むを得ない用事で、外出するときには、ガーゼを沢山詰めたマスクを掛けた。そして、出る時と帰った時に、叮嚀(ていねい)に含漱をした。・・・(「マスク」P.12)

100年前も現在も予防の基本は同じです。

 

「船医の立場」「身投げ救助業」「島原心中」「仇討禁止令」には流行性感冒は出てこないが(船医~は、流行性皮膚炎が出てくる)、幕末~明治初頭の時代が大きく変わったことによる副作用的な内容が興味深い。

江戸時代初期が舞台の「忠直卿行状記」は、現代にも通じる?。

そして巻末の「私の日常道徳」は作者の行動基準を記してあります。

・・・約束は必ず守りたい。人間が約束を守らなくなると社会生活は出来なくなるからだ。従って私は、人との約束は不可抗力の場合以外破ったことがばい。ただ、時々破る約束がある。それは原稿執筆の約束だ。これだけは、どうも守り切れない。・・・(P.210)

 

何かが大きく変わると時代も環境も全てが大きく変わるが、100年~400年以上経っても、人間のやる事為すことはそんなに変わらないのでした。

モチロン、感染対策もです。