「復活の日」 小松左京

・・・吹雪のアルプス山中で遭難機が発見された。傍には引き裂かれたジュラルミン製トランクの破片。中には、感染後70時間以内に生体の70%に急性心筋梗塞を引き起こし、残りも全身マヒで死に至らしめるMM菌があった。春になり雪が解け始めると、ヨーロッパを走行中の俳優が心臓麻痺で突然死するなど、各地で奇妙な死亡事故が報告され始める。・・・

 

初版は、前回の東京オリンピックの年。

後に映画化されたこともあり、なんとなく内容は知っていたつもりでした。

注目される時期・内容から予言の書!・・・話題になっていたので読み始める・・・。

・・・以前に読んだ「ペスト」(デュフォー版)より遥かに衝撃的。

「チベットかぜ」と呼ばれる謎の新型インフルエンザによって、描かれた東京の医療崩壊現場はマサに戦場でした。

治療にあたる医師が、先の戦争での軍医~という本書の時代背景(1960年代後半)がリアリティを増大。

 

・・・インフルエンザ?-ワクチンがあるじゃないか。××って風邪薬はきくぜ。漢方薬がいいよ。葛根湯、いやみみずのかげ干しを煎じてだね・・・。抗生物質はあまりきかないって話だ。なあに栄養とって、湯タンポいれてねていりゃ、いっぺんに・・・。玉子酒にかぎる・・・。梅干しの黒焼きを焼酎にいれて・・・。入院?大げさね、あんた。-たかがカゼじゃないの!
たかがインフルエンザじゃないか!・・・そのたかがが、どこか心の奥底の方で、まさかにかわりつつあった。人々が、まだ意識に上せていないはるか奥の方で、インフルエンザというシンボルのもつ意味は、徐々にその比重を変えようとしていた。
まさか、インフルエンザなんかで!・・・(P.218)

新型コロナウイルス~という言葉が聞かれ始めた頃~現在に至るまで、一度は話した内容とほぼ一致しているかも・・・。

 

緊急事態宣言解除から徐々に規制解除に向っていますが、本書を読んで、戦慄してしまった。

これは、50年前の小説ではなく現在のこと。

第2波~3波も含め、確実に将来現れるであろう新型ウイルス対策は必須。

 

ウイルスはしたたか(本書のモノはウイルス兵器だが)~人間も・・・結末も含め、あくまでもフィクションだと思いたい。