「戻り川心中」 連城三紀彦

表題含め、「藤の香」「桔梗の宿」「桐の柩」「白蓮の寺」「戻り川心中」が収められた短編集。

それぞれ花にまつわるミステリー。(「戻り川心中」は花菖蒲がポイントの推理。)

第一次世界大戦の特需で華やかな時代かと思われる大正~昭和初期の時代背景だが、全編を通して暗いです。(ミステリーだから当たり前か・・・)

陽が当たらない社会の一面が描かれているが、そんなに陰湿でもない気がしました。

もしかしたら社会全体から見ると、陽が当たる面の方が異質なのかもしれない。

内容は、おどろおどろしいがモノローグ調で語られる文章は、とても美しいと思います。

 

・・・あくまで主人公は花のつもりです。散らずに残った花、咲く前に捨てられた花、泥に踏みつけられた花、血で描かれた花、人肌に染みついた墨色の花ーーーそして書きたいのはあくまで探偵ものですから、トリックとしての花、伏線に使われる花、ダイイングメッセージの花、凶器の花・・・(解説)

 

きれいな「花」は、毒を持っていたり、人を惑わす存在もあるのでした・・・。