「毎日あほうだんす」横浜寿町の日雇い哲学者 西川紀光の世界  トム・ギル

日経紙文化面に著者の記事が載り、興味をもったので読んでみました。

 

・・・労働者の街、横浜・寿町に西川紀光という男がいた。酒と港を好み、仕事がない日は「ドヤ」(簡易宿泊所)で哲学書をはじめとした様々な本を読みあさる。その思考は縦横無尽に広がった。港湾で働きながら思索を深めた米国の社会哲学者、エリック・ホッファーのような存在だった。(中略)私が英国人と分かると歴代首相の名を挙げ英語で話しかけてきた。失礼ながら、ここにインテリがいるとは思っていなかったので驚いた。・・・(日経紙文化面1月20日)

 

著者は、社会人類学者として、日本の日雇い労働者の研究と博士論文フィールドワークの際に、紀光(キミツ)と出会う。

研究対象でもあり友達でもあった・・・そして、紀光が世を去るまでの記録と考察を書いたのが本書。

 

「阿呆ダンス」~と著者が聞き間違えた?のは、紀光独自の「affordance(提供する~心理学用語)」論。

日雇いでお金を得ることも、生活保護を受けることも寿町のaffordanceだった。

居心地が良かったのでしょうか・・・自由に踊れる(振る舞える)ようで実は常に制約を受け、束縛されている~。

一般社会で普通に生活を送っているようでも、あほうダンスの舞台は変わらないのかもしれない(あたわり・・・なのか?)。

 

本書の切り口は、外国人ならでは。

どのような環境でも学ぶことは出来るし、学ばなければいけない。

キミツに一種の憧れを感じる。

自由と知的好奇心は失いたくない~と思います。