「神隠し・隠れ里」柳田国男傑作選  柳田国男 大塚英志

・・・渡った人が消える橋、”あちら側”の住人のような猫、神隠しに遭った人が住む隠れ里~各地の説話に柳田は何を思い、描いたのか。・・・(本書カバー)

 

巻末の編者解説を読むと、著者の原体験やそれに基づく思想が、なんとなく理解できます。

そもそも、本書を手にしたのは~タイトルに惹かれたからで、民俗学の謎めいた興味からだが・・・。

 

序章「作之丞と未来」・第一部「神隠しにあいやすき気質」遠野物語(抄)神隠し譚~を読みながら、背中がゾクゾクするのでした。

天狗に過去と未来のいずれが見たいかと問われ、未来が見てみたいと答えたばかりに神隠しに遭い百年後を見た作之丞の物語。

遠野郷の長者の娘が神隠しに遭い、後年村人に目撃されるが山男(正体不明)の妻となっていた話を含む類似の話がオソロシイ。

あらためて、この「神隠し譚」の部分を見ているのだが・・・怪談のようなゾクゾク感再び・・・。(>_<)

うっそうとした山中の森林を歩くと(しないと思うが)「神隠し譚」を思い出して戦慄するでしょう。

おとぎ話~伝承なんだけど、怖い。

 

また、中盤の「甲賀三郎の物語」は「暗黒神話」に登場していたので興味津々で読む・・・隠れ里~根の国(地下世界)に連なり、詳細に述べられていましたが、偽書?トンデモ本扱いだったのですね(残念!)。

思い返せば、浅学ながら歴史や民俗学に興味を持つきっかけになったのが「暗黒神話」でした。

そのおかげで、難解な?本書を手にすることになっています。

 

・・・いくら未来を見たといっても、それまでを樹上で無為に過ごし、人生の経験を積まなかったから、せっかく未来に生きても何も語り得なかった作之丞は、自身の経験を糧に正しくその未来を描き得なかった「今までの歴史学」(戦時下の歴史学、そして民俗学)への強い内省として占領下の昭和24年に書かれた。・・・(P.8解題)

 

前述の作之丞は、天狗によって崖上のモミの木に百年間ぶら下げられ眠っていました。

なんだか、他人事ではないような気がします・・・。