「やりがい搾取」の農業論  野口憲一

民族学者兼現役レンコン農家の著者が日本農業の成長戦略を語ります。

タイトルからして「やりがい搾取」~挑発的。

本書帯の「ずっと豊作貧乏」「キレイゴトの有機農業」「スマートじゃないスマート農業」といった刺激的な言葉が目を引きます。

帯裏面にも~防共政策としての農地改革が生んだ「共産主義的価値観」/技術力のない農家ほど「政治」に走りやすい/反体制運動としての有機農業・・・とあり、本書中で詳細が語られる。(農協批判か?・・・)

 

・・・仮に雇用労働者ではなく事業主であったとしても、働くことが楽しいのは「自由意志が存在している時」です。労働に限らず、どんなに楽しい趣味でも、強制されたり、生活のために何が何でもやらなければならなくなったりすると、楽しくなくなってしまう。・・・(P.97)

上記の「仕事」と「労働」についての考え方に共感です。

愛情をこめた「仕事」の結果として収穫された作物と、苦役としての「労働」の結果として収穫された作物の評価(価格)が変わらなかったら・・・著者の言う「やりがい搾取」に通じる。

最近、話題になる「植物工場」や「スマート農業」についても、栽培作物への惜しみない、湧き出る「愛情」(ソフト)が足りないと、どれだけ栽培環境(ハード)を整えても良い作物、高価格で取引される作物はできないと断言。

・・・確かに納得できる。

先ずは「愛情」ありき~それに技術・環境整備が伴っての「良い作物」。

農業は「きれいな部分」だけではない(当たり前)、泥まみれにもなる。

「やる気」ではない~「愛情」があれば・・・なんでもそうだなぁ。