「蜘蛛女のキス」マヌエル・プイグ 野谷文昭【訳】

・・・ブエノスアイレスの刑務所の監房で同室となった二人、同性愛者のモリーナと革命家バレンティンは映画のストーリーを語りあうことで夜を過ごしていた。主義主張あらゆる面で正反対の二人だったが、やがてお互いを理解しあい、それぞれが内に秘めていた孤独をも分かちあうようになる。両者の心は急速に近づくが・・・。(本書カバー)

 

初のラテンアメリカ文学。

ほとんどが、監房内でのオネエ言葉のモリーナとマッチョな?バレンティンの会話だけ。

やや退屈(?)しかけたところで~スパイスが投じられる!~こんな展開は初めてです。

ストーリーの急展開もあるが、活字書体の変化、注釈トリック?と、小技が散りばめられている。

当初は手こずりましたが、なかなか印象に残る作品でした。

 

時代や政治的背景がわからなくても、マイノリティーの人々が生きづらい環境のようです。(今でも変わらないか・・・)

モリーナが語る映画ストーリーは薄幸な女性が登場する内容ばかり。

自らを投影しているのでしょうか。(そもそも映画は存在したのか?)

 

そして、本書の終わりではモリーナのいじらしさ?炸裂します。

 

・・・<だいじょうぶよ、バレンティン、そんなことにはならないわ、だって、この夢は短いけれど、ハッピーエンドの夢なんですもの>・・・