先ごろ、フィリッピン沖海底で発見された旧海軍戦艦「武蔵」について書かれた本を読みました。

「戦艦武蔵」 吉村 昭

「武蔵」について多少の知識はあったつもりだったが、この綿密な取材で描かれたドキュメンタリーに驚愕です。

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1番艦(大和)2番艦(武蔵)は、徹底的な秘匿のうちに計画され、艦の大きさを悟られないように過少規模に見積もった建造予算を提出し、不足分は他の艦艇予算で補うという、国会や大蔵省をも欺く工作がなされていたという。(現代でも似たようなことがあるんじゃない?。)

進水~竣工まではどちらかというと、トテツモナイ艦を造っていく過程を描く、現代のインテリジェンス小説さながらの展開に、ワクワクしながら読めました。

ただし、竣工後は輸送艦のような役割があったり、燃料節約の為に停泊していることが多かったりと、本来期待された活躍が出来ていなかった事実に唖然・・・。

武蔵は7年以上の歳月と、多くの人命と大量の物資をつぎ込んだ一大国家プロジェクトだったが、約2年しか活動できなかった。

その存在は軍関係者にしか公表されず、最後の海戦では想像を絶する中で、囮艦的役割を担って米軍の攻撃を一手に受けて海に消えた。

僅かな生存者のその後も過酷。

不沈艦(安全?)を謳われていたが、それは神話そのもの。

当初は4番艦まで計画されていたが、航空戦力が主流になり3番艦は開戦後、間もなく空母に変更(信濃)、4番艦は解体されてしまった。

 世の中には不要な存在は無いとはいうが・・・。

 

一気に読み切った後は、疲労と虚脱しか感じなかった。