ジャスミンの残り香~「アラブの春」が変えたもの 田原 牧

 

これも自分からはマズ読もうとは思わない本だが、某所で読んでみなさいと手渡される。

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・・・2011年初頭の「アラブの春」から、アラブ世界に硝煙が立ちこめる2014年夏まで3年余。

この小さな旅の半年前、エジプトでは「革命」が覆され、倒されたはずの独裁体制が復活しつつあった。

巷では「革命」の栄光が水泡に帰したのは、愚かな市民たちが迷走したためだとすら語られていた。・・・

 

・・・2010年暮れ、22あるアラブの国の一つ、北アフリカのチュニジアで一人の貧しい野菜売りの青年が警官に暴行され、抗議の焼身自殺を図った。

この事件に衝撃を受けた青年たちが路上に繰り出し、翌月、この国のベン・アーリー独裁政権を打倒した。

「ジャスミン革命」と命名されたこの事件が、地域を席捲した「アラブの春」という激動の始まりだった。

エジプトではチュニジアの革命に触発されたリベラルな青年たちが、2011年1月25日の「警察の日(記念日)」にフェイスブックでデモを呼びかけた。ここでのリベラルという意味は、政権支持派はもとより左派の政党人でもなく、かつ反宗教主義ではないがイスラーム主義でもないという程度の緩い括りを指す。

チュニジアと同じように、エジプトの青年たちも警察の横暴に怒っていた。

そのデモは拡大し、17日後、30年続いたムバーラク政権が倒された。

人びとはデモの始まった日にちなみ、この政変を「1月25日革命」と命名した。・・・(P.18~20)

 

報道は分かりやすく人々が興味を持ちやすい部分ばかりクローズアップされて、事件や出来事の本質や要点がかすんでしまう。

「アラブの春」もフェイスブックの伝播性ばかりが強調された報道しか記憶にないです。

(間違った情報や意図的に操作された情報もアッという間に伝播する。)

著者とアラブの地に住む無名の人々との交流から、報道にはマッタク現れてこないリアルなアラブ世界の一端を知りました。

 

ちなみに著者は、かつて左派活動家であり、性同一性障害もあるという。

そのこともあり、やや色眼鏡で読んでいましたが・・・。

 

<無知はみにくく、それは体制の産物だ/武器はいつの時代も利用される/人びとに魚を与えれば、彼らは一日でそれを食べてしまう/釣り方を教えれば、彼らは毎日でも食べられるようになる/知識は光だ。・・・>

(P.248)

<本書に登場する国々>⇓

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遠い場所ながら日本とも繋がりが深いアラブ世界が激動しています。

政権や軍の力が強いため、人命が軽んじられることも度々起こる。

そんな中、あらためて日本がとても平和でノンビリ~とした社会であることを再認識です。

これは素晴らしいこと・・・と理解していいのだろうな・・・。