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「美しい星」 三島由紀夫

初めて読む三島由紀夫作品。

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本書カバーでは、タイトルより著者名が目立っていますね~。

今でも、それだけ著者の影響力があるということか。

 

空飛ぶ円盤を目撃したことで、自分たちが高尚な宇宙人であることに気付いた?(と思い込む?)人々が登場するSFタッチで読みやすい小説。

 

しかし、冒頭からガツン!とまるで、頭を叩かれるような(激)文が飛び出す。

・・・数十人の死傷者を出した列車事故や、数百戸を一ㇳ呑みにした洪水のニュースをきくたびごとに、彼は身をすくめて、自責の念におののいた。

この同じ地上に住む以上、すっかり統一感を失った世界とはいえ、彼はやはりあらゆる犯罪、あらゆる不祥事に対して、無答責であるとは云えないのだ。

そうしてこういう身を裂く苦しみだけが、世界の全体感を回復するかもしれないのだ。

彼がある朝、庭の生垣の茶の花の一輪を摘むときに、この地上のどこかでは、ふしぎな因果関係によって、(おそらく摘まれた茶の花が原因をなして)、誰かが十噸(トン)積のトラックの下敷きになっているかもしれないのだ。

それでも、なおかつ、彼の肉体が痛まないとは何事だろう!

一人の人間が死苦にもだえているとき、その苦痛がすべての人類に、ほんのわずかでも苦痛の波動を及ぼさないとは何事だろう!・・・・。(P.19)

 

宗教者のように世界中の苦しみを共有し受け入れ、永遠の人類平和と安寧、地球の救済を訴える主人公の一人、大杉重一郎とその家族。

そして、同じく円盤を目撃したことで、反対に人類の滅亡を図ろうとする宇宙人の羽黒一党との対決が繰り広げられます。

両者の弩迫力激論の場面は、有名な陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地建物バルコニーでの三島由紀夫の演説シーンが思い浮かぶのでした。

 

また、大杉家の長女暁子が同志宇宙人?(金星人)に会いに訪れた、昭和37年くらいの金沢の情景がなつかしい。

当時も現在も大枠では、あまり変わっていない~かな?。

・・・兼六公園(!)から見る卯辰山のヘルス・センター・・・の表現に、しばしノスタルジーに浸るのでした。

しかし、路面電車は知りません。

 

本書が著わされて50年以上経っているが、地球は「美しい星」に向かっているでしょうか・・・。