「将軍たちの夜」ハンス・ヘルムート・キルスト

51b5imFgKqL__SX350_BO1,204,203,200_.jpg

1942年、ナチス・ドイツ占領下のポーランドで猟奇殺人が発生。

唯一の目撃証言はドイツ軍人、それも将軍クラスの人物による犯行を暗示していた。

ドイツ軍防諜部のグラウ少佐は、容疑者を3人の将軍にまで絞り込み捜査を進める。(本書カバー)

 

カバー・口絵イラストが安彦良和というのは、高ポイント。

読む前から期待が高まります。

ドキュメンタリー風に陳述や日記が入り、ノンフィクションのような展開。(フィクションです。)

戦時下なのに、ワインだ~シャンパンだ~鴨料理~が登場するのはパリが舞台だから。

高級将校の、このような日常に驚く。

 

戦争では何千~何万もの戦死者や、けが人が発生します。

その中では、一人くらい増えても・・・ということもあり得る?、ドサクサに紛れて。

また、正当化される正義の暗殺はあるのか?。

戦争が生み出した狂気~それとも狂気が戦争を引き起こすのか?。

ご都合主義的な展開もありましたが、根深いテーマが流れています。

 

「犠牲は払われなければならない!」とか「大事を行うには多少の犠牲は付きものだ」とか「人間は歴史の肥やしである。その死が国家の繁栄をもたらすのだ」とかいう決まり文句が用いられるとき、それは安っぽい逃げ口上以外の何ものでもない。人類をより良き未来に導く道には死体が敷き詰められているなどという歴史家もいるが、彼自身はその死体には含まれておらず、また、そうなるつもりもない。(P.467)