「海鳴り」(上)(下) 藤沢周平

裁判の非情と人情」で、紹介されていた藤沢作品を読む。(やっと読めた?。)

登場人物の心の動き、葛藤の描き方がリアル?だと思う。

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~はじめて白髪を見つけたのは、いくつの時だったろう。四十の坂を超え、老いを意識し始めた紙商・小野屋新兵衛は、漠然とした焦りから逃れるように身を粉にして働き、商いを広げていく。だが、妻とは心通じず、跡取り息子は放蕩、家は闇のように冷えていた。やがて薄幸の人妻おこうに、果たせぬ想いを寄せていく。(上巻 本書カバー)~

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新兵衛さん!ダメだって!やめときなさい!と、心で叫びながら読んでいました。

現代ではよくある?ダブル不倫話。

しかし、江戸時代の不義密通はタブー、死罪に相当する大ご法度です。

作品中にも、世間で曝しモノ扱いされる表記が・・・。

 

~たしかに世間は善意のひともいれば、悪意のひともいた。世間は時に悪意をむき出しにして襲いかかって来たが、稀には救いの手をさしのべても来たのである。渡る世間は鬼ばかりではなく、世間は善意と悪意の巨大な混淆物だった。

だが、善意のひとも、一たん利害が対立すると、手のひらを返したように悪意に満ちた中傷をばらまいたりすることもめずらしくはなかった。~(下巻P.15)

 

舞台は江戸時代だが、現代のドラマでもあります。

商売上のトラブルに見舞われながら、必死で解決策を見出そうとする新兵衛さんに感情移入。

そして、ほぼ同時進行で進む、おこうさんとの逢瀬にドキドキ。

もし、新兵衛さんだったら、どうしていただろう・・・?。

 

危ない橋は渡らない方がいいに決まっているが~。