「世界神話学入門」 後藤明

亡き妻を求めて冥界に下るイザナギとオルフェウス。

海幸・山幸神話と釣針喪失譚~なぜ世界中でよく似た神話が見られるのか?

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世界の神話は古いタイプの「ゴンドワナ型」と新しいタイプの「ローラシア型」の二つのグループに分かれる。

「ゴンドワナ型神話」=人類最古の神話的思考:ホモ・サピエンスがアフリカで最初に誕生したときに持っていた神話。「出アフリカ」にともなう移動により、アフリカやオーストラリアのアボリジニの神話になった。

「ローラシア型神話」=人類最古の物語:すでに地球上の大部分の地域にホモ・サピエンスが移住した後、西アジアの文明圏を中心に生み出された神話。ユーラシア大陸から南北アメリカ大陸、太平洋域へと広く広がった。

この仮説は、DNA分析によるホモ・サピエンス移動の軌跡と合致する。神話を分析することで、ホモ・サピエンスのたどった足跡がよりよく理解できるようになったのだ。(帯カバー裏面)

 

神話・民話~は、マッタクの作り話ではなく、人類の古い記憶の名残りとして口伝えで保存、伝播されていた・・・。

夢のある世界観はあるし、世界中にある神話のあまりの相似に背筋がゾクゾクします。 (@_@;)

・・・ゴンドワナ型神話とは、物語化するのが至難な、というか、そもそも「物語」という営みが成立する以前に存在していたホモ・サピエンスの原型的な思考である。ローラシア型神話は神がいかに世界と人間を創造したのか、いかに人間はその生存域を拡大したのか、また人間の間にいかに不平等が生まれていったのかを語る神話である。

一方、ゴンドワナ型神話は、そもそも人間と、動植物や自然現象を区別しない時代、人間もその一員として森羅万象や動物、木々や花々とともにささやき合っていた時代の神話である。言いかえればそれは文字が要らなかった時代の神話とも言える。少々勇み足をして言えば、それは、自民族中心主義や征服者の思想には決して導かれることのない神話、すなわち現代の世界にもっとも必要とされている思考方式とは言えないだろうか。

ふたたびモラルの起源に戻れば、狩猟採集民の社会では、仮に狩猟が得意な者がいたとしても、あからさまにそれを自慢することは、とても嫌われるという。ましてや肉を独り占めにしたりすることは御法度である。同じ集団で互いに依存して生きることをもっとも重視しているからだ。(P.266)

神話は人類の知恵と歴史なのでした。