わたしを離さないで
「わたしを離さないで (Never Let Me Go)」 カズオ・イシグロ 土屋政雄=訳
映画とテレビドラマ化されているようですが、予備知識一切無し。
以前に読んだ「日の名残り」のように回想から始まります。
読み始めから~暗雲が立ち込めるような雰囲気。
淡々と主人公キャッシーの語りが続くが、先の予想がマッタク出来ない。
主人公たちが暮らすのは「ヘールシャム」・・・寄宿舎なのか?。
イギリスが舞台なので全寮制の学校で繰り広げられる青春ドラマかと思っていました。
しかし、物語の背景に晴れ間が見えない。
この物語はひよっとして・・・想像していた展開とは大違い。
少しづつオゾマシイ全容が明らかになっていく。
おれはな、よく川の中の二人を考える。どこかにある川で、すごく流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。
互いに相手にしがみついている。必死でしがみついているんだけど、結局、流れが強すぎて、かなわん。
最後は手を離して、別々に流される。おれたちって、それと同じだろ?残念だよ、キャス。
だって、おれたちは最初から・・・ずっと昔から・・・愛し合ってたんだから。
けど、最後はな・・・永遠に一緒ってわけにはいかん
トミーがそう言ったとき、わたしはリトルハンプトンからの帰り道、風の吹きつける夜の野原でトミーにしがみついていたことを思い出しました。(P.432)
「日の名残り」ツーリズムは、面白そう!と思ったが、「わたしを離さないで」ツーリズムはチョッと・・・。