霜月 朔日 忘れられた巨人
「忘れられた巨人」 カズオ・イシグロ
・・・イングランドと聞けば、後世の人はのどかな草地とその中をのんびりとうねっていく小道を連想するだろう。だが、この当時のイングランドにそれを探しても、見つけるのは苦労だったはずだ。あるのは、行っても行っても荒涼とした未墾の土地ばかり。
岩だらけの丘を越え、荒れた野を行く道らしきものもないではないが、そのほとんどはローマ人がいたころの名残で、すでに崩壊が進み、雑草が生い茂り、途中で消滅していることも少なくなかった。
川や沼地には冷たい霧が立ち込め、当時まだこの土地に残っていた鬼たちの隠れ住む場所になっていた。・・・(P.11)
文庫化されたので読みました・・・決してミーハーぢゃありません。(多分)
ドラゴン・悪鬼・妖精が跳梁跋扈する5~6世紀のグレートブリテン島が舞台です。
現代ではファンタジーだが、かつてはドラゴンや妖精は存在したのかもしれない。
いまでもいる?、人の心の中にいるのかも。
アイデンティティ・記憶・愛・生と死・・・「日の名残り」「わたしを離さないで」を彷彿させる内容かと。
賛否が分かれる作品かも?個人的には、記憶を辿る旅路に同行していたつもりでした。
お互いを思いやるアクセルとベアトリスのやり取りに~余韻が残ります。
あっという間に読み終えたが、ラストの解釈は各人各様かな?。
今月も、忘れられない?ように・・・。