世襲の日本史
世襲の日本史 「階級社会」はいかに生まれたか 本郷和人
・・・どうも日本では「地位より人だ」と考えられてきたらしいのです。しかし、ここでいう「人」とは何かというと、その人のありのままの姿ではなく、その人が受け継いでいる「血」なのです。なるほどそれで世襲か。いやいや待てよ、より慎重にみていくと、「血よりも家」ではないか。「家」が肝心・要なのだ。まとめると、「地位より人、人というのは血、いや血より家」、これが日本の大原則だったのです。・・・(まえがき)
~といきなり冒頭で結論が書かれています。
「皇室」を思い浮かべるとわかりやすいかも。
実は、著者自身「世襲」が嫌いなようなのだが・・・。
・・・お寺や神社の運営については、「遷代の職(せんだいのしき)」と「永代の職(えいたいのしき」といものがあります。「職」は「職の体系」の「職」と同じで、権利という意味です。これは現代にもつながる問題です。
たとえばある人がお寺のトップに登り詰めたとします。すると、基本的にはお寺の財産はその人のものになります。しかし、寺に長く伝わる経や仏像を独断で処分してしまうようなことは許されるのでしょうか。(中略)ここで提起される問題は、「それは遷代の職なのか、永代の職なのか」ということです。
永代の職とは、古くから受け継がれ、さらに未来に手渡すような価値に関わるものです。一方で、時代の変化に応じて変えるべきところは変えるという判断は、遷代の職で考えなければなりません。(中略)
お寺の場合は家とは少し違いますが、前の時代の物を受け継いで次の時代の人に渡すということを、日本人はかなりきちんとやってきたと言えます。それは、自分が何かをするという感覚をどこかで押さえ込んで、その家の一員として振る舞ってきたということです。・・・(P.109~P.111)
引用が長くなりましたが、この「遷代の職」「永代の職」は、ピンポイントでタイムリー?で目から鱗でした。
また、日本の穏やかな気候風土も「世襲」に深く関係していたのですね。
昨今の過酷な気候変動やグローバル経済の流れに巻き込まれてしまっている現代日本。
「世襲」がやりにくくなってきているのかもしれない・・・。