人新世の「資本論」
人新世の「資本論」 斎藤幸平
・・・人類の経済活動が地球を破壊する「人新世」=環境危機の時代。気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。それを阻止するためには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。・・・(本書カバー)
「人新世」という言葉を初めて知ったのは令和になったばかりの頃の新聞上でした。
・・・「人新世」は20年ほど前に、地質学上の時代を区分する新しい仮説として登場した。人間の活動が地球環境に無視できない影響を影響を与えるようになった時期を指す。(中略)科学技術の発達や人口増加、天然資源の浪費などが、火山噴火や隕石の衝突、巨大地震に匹敵するインパクトを持つと考えられるようになった。(日経紙2019年5月28日 哲学者 篠原雅武)・・・
以前読んで暗鬱な気持ちになった「資本主義の終焉と歴史の危機」「閉じていく帝国と逆説の21世紀経済」の回答が本書にある?。
何となくウサンクサイなーと感じていたSDGsについて、冒頭でSDGsは「大衆のアヘン」である!と喝破していたことは小気味いい・・・。
本書が示すような社会環境を大きく変えるためには時間がかかる上に、既存抵抗勢力の影響も多大だと思います。
しかし、「フェアレス・シティ(恐れ知らずの都市)」を掲げるバルセロナ~等のヨーロッパの都市では、脱経済成長の兆しがみられている。
また、誤解をおそれずに言うなれば、ひょっとしたらコロナ禍は変化を加速するための「見えざる手」なのではないか?という気もしました。
・・・既存の経済モデルは、恒常的な成長と利潤獲得のために終わりなき競争に基づくもので、自然資源の消費は増え続けていく。こうして、地球の生態学的バランスを危機に陥れているこの経済システムは、同時に経済格差も著しく拡大させている。豊かな国の、とりわけ最富裕層による過剰な消費に、グローバルな環境危機、特に気候危機のほとんどの原因があるのは、間違いない。・・・(P.330)
自分のことでは無い・・・と思いたいが、日本を含む経済先進国の影響は大でしょうね・・・。
余談ながら、周辺から搾取する資本主義経済から離れ「潤沢な脱経済成長」を目指すことを訴える本書なのに、カバーオンカバーオン・・・と資源浪費とも思える状態になっていることが痛いな・・・。