クララとお日さま

「クララとお日さま」 カズオ・イシグロ

・・・人工知能を搭載したロボットのクララは、病弱の少女ジョジーと出会い、やがて二人は友情を育んでゆく。愛とは、知性とは、家族とは?・・・(本書カバー)

 

「お店」で、早く引き取って(買って)もらおうと、AFたちは愛嬌をふりまき、気に入られようとするが・・・。

店頭で子どもとAFが購入約束をするが、子どもは気まぐれで新型や他のAFに興味が移ってしまうこともある。

幸運にも家族に引き取ってもらえても、全てのAFが家族とのいい関係を築けるとは限らない・・・。

「お店」のショーウィンドウに並べられるAF(子供型太陽光駆動式人工知能搭載友達ロボット・・・だと思う)たちの光景と、AF同士や「店長さん」とのやり取りは~ペットショップにいる動物たちを連想してしまい切なくなります。

動物たちもAF同様に観察し学習し、会話していると思うので・・・。

また、物語では詳しく語られていないので、そうではないAFもあるのかもしれないが、引き取り先の子どもの成長にしたがって~やがてはお払い箱になるのも、切ない。

人工知能の中身は引き継がれるのだろうけど・・・(ビッグデータとして蓄積される?)。

子供型ロボット・・・やや不気味な姿を想像していたが、上記の冒頭の店頭シーンで、そのイメージは払拭です。

アトム~ドラえもんみたいな感じとも違うが。

 

そして、物語の近未来では子どもたちに「向上処置」という遺伝子編集が行われて、未処置だと進学もままならないという格差社会が進行している。

そもそもAFを購入できるのは限られた人々のはずだし、AFが必要とされるほどの少子化が進んでいるのかも。

この辺りは「わたしを離さないで」の世界観。

 

クララが嫌う「クーティングズ・マシン」という用途不明の機械は、近未来社会の問題点を象徴している存在なのでしょう。

このように科学は究極の進歩?を遂げてはいるが、ヒトが忘れてしまった祈り~AFであるクララの信じる気持ちによって希望の光が射しこむ。

ディストピア小説?でも、空には「お日さま」が輝いているのでした。