渋沢栄一伝
「渋沢栄一伝」幸田露伴作
・・・まさに「栄一は実に時代の人であった」というわけである。このように渋沢を語るに当たり、露伴は時代を主体として語っていた。・・・露伴は時代の中で渋沢を時代という審級から相対化して、徹底的に神話化を回避しようとしていたのである。(「解説」より)・・・
昨年の大河ドラマ「晴天を衝け」を見終えてから読みだした「渋沢栄一伝」~ドラマの復讐です。
「伝」の登場人物が、イチイチ演じた当世人気俳優と重なるので読みやすい?ような。
幸田露伴作品は、以前「五重塔」を読み印象に残っています(一作品のみだが・・・)。
文章表現が文学作品らしく?難しかったですが、本作も同様にテコズリました・・・。
・・・商人は古より存在した。しかしそれは単に有無を貿遷(ぼうせん)し、錙銖(ししゅ)を計較(けいこう)して、財を生じ富を成すを念とせるもののみであって、栄一の如くに国家民庶の福利を増進せんことを念として、商業界に立ったものは栄一以前にはほとんどない。金融業者も古より存在した。しかしそれも単に母を以て子を招(よ)び、資を放って利を収むるを主となせるもののみであって、栄一の如く一般社会の栄衛を豊かに健やかならしめんことを願とせるものは栄一以前にはほとんどない。・・・(P.246)
時代の大変革期に現れた希代の人物たち~渋沢栄一だけではなく、当時は大志を抱く若者が日本中に満ちあふれ活躍していた。
現代は、生命の危機は伴わないが(多分)大変革期と言えるかも。
大志を抱く変革の能動者が現れる?既に現れている?。