「戦前」の正体

「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史 辻田真佐憲

・・・筆者はここで、同じく昨年、凶弾に斃れた安倍元首相が唱えた「日本を取り戻す」「美しい国」というスローガンを思い出さずにはおれない。それはときに戦前回帰的だといわれた。だが、本当にそうだっただろうか。靖国神社に参拝しながら、東京五輪、大阪万博を招聘し、「三丁目の夕日」を理想として語るーー。そこで取り戻すべきだとされた「美しい国」とは、戦前そのものではなく、都合のよさそうな部分を適当に寄せ集めた、戦前・戦後の奇妙なキメラではなかったか。今日よく言われる戦前もこれとよく似ている。その実態は、しばしば左派が政権を批判 するために日本の暗黒部分をことさらにかき集めて煮詰めたものだった。つまり「美しい国」と「戦前」は、ともに実際の戦前とはかけ離れた虚像であり、現在の右派・左派にとって使い勝手のいい願望の産物だったのである。(中略)このような状態を脱するためには、だれかれ問わず、また右派にも左派にも媚びず、戦前をまずしっかり知らなければならない。・・・ 「はじめに」より

 

明治維新から太平洋戦争敗戦まで77年。

その敗戦から2022年(令和4年)まで77年。

「戦前」より「戦後」の期間が多くなろうとしています。

 

いわゆる「右派」から批判を浴びること必至!と思った本書タイトルなんですが、著者自身はもともと右寄りな方なんですかね?。

冷静沈着な右寄りです。

 

架空?実在の人物だった?なにかと脚光を浴びる初代神武天皇を始め、国体、神国、皇室典範、万世一系、八紘一宇、教育勅語、靖国神社、君が代、軍歌、唱歌・・・といった「戦前」を語るうえで外せないキーワードはことごとく神話と関係しています。

 

「正体」のようなモノは本書で語られるが、その時々の権力者、為政者に利用される存在のひとつなのだなーと思いました。

「空気」「雰囲気」が醸成される源のひとつでもある。

本書を読みながら、神道(神話)の他にも仏教、キリスト教も含めて多くの思想が「戦前」を担っていたことを確信?しました。