文月朔日 世界は経営でできている 

「世界は経営でできている」 岩尾 俊兵

・・・日常は経営であふれている。仕事にかぎらず、恋愛、勉強、芸術、科学、歴史・・・などあらゆる人間活動で生じる不条理劇は「経営という概念への誤解」からもたらされる。もちろん、ここでいう経営はいわゆる企業経営やお金儲けを指していない。(中略)本書が扱う経営概念は多くの方の固定観念と相いれないだろう。この本は経営概念そのものを変化させる書であり、日常に潜む経営がもたらす悲喜劇の博物誌でもある。・・・

 

収益目的の企業だけが「経営」をしているのではないものの~現代の学校や病院・家庭が不合理の塊(多分)なのは周知の事実。

① 本当は誰もが人生を経営しているのにそれに気付く人は少ない。

② 誤った経営概念によって人生に不条理と不合理がもたらされ続けている。

③ 誰もが本来の経営概念に立ち返らないと個人も社会も豊かになれない。

以上、世の中に「経営」が不足していることが、問題!と訴えるのが本書・・・著者曰く「令和冷笑体エッセイ」らしい。

文中に( )で著者個人見解が数々登場するが、これを煩わしい!と思うか、面白い!と思うかは、賛否両論でしょうね。(自虐的?割と好き!)

各章の項目に付けられたお題目が、古今東西の文学作品名をモジって付けられているのもいとおかし。(経営の耐えられない軽さ・誰がために紙を貼る~等々)

 

本書の帯に「資本主義から仕事の楽しさと価値創造を取り戻す痛快エッセイ集」~佐藤幸平氏(人新世の「資本論」著者)推薦!とあります。

資本主義の限界~資源奪い合いからの脱却を主張するあたりは、なるほどーと思う。(共産主義ではない)

 

・・・プラトンの時代からドラッカーの登場まで、人類史における本来の経営は「価値創造という究極の目的に向かい、中間目標と手段の本質・意義・有効性を問い直し、究極の目的の実現を妨げるさまざまな対立を解消して、豊かな共同体を創り上げること」だったはずだ。・・・(P.194)

 

文月の最初に相応しい、サクッ!と読める新書でした。

憂さ晴らしかも?ベストセラーになるのもわかります。 (^_^;)