長月朔日 サンショウウオの四十九日

第171回芥川賞受賞作「サンショウウオの四十九日」 朝比奈 秋

物語の最初は何気ない家族の光景かと~杏と瞬の姉妹が登場するが、二人は「結合双生児」・・・見た目は一人の人間。

 

・・・私たちは、全てがくっついていた。顔面も違う半顔が真っ二つになって少しずれてくっついている。結合双生児といっても、頭も胸も腹もすべてがくっついて生まれたから、はたから見れば一人に見える。今でも初対面の人は、私たちの顔を見た時、面長の左顔と丸い右顔がくっついたものとは思わない。・・・(P.309)

 

結合双生児~有名な?ベトちゃんドクちゃんは腰部がくっついてそれぞれの上半身を持っている。

本書で初めて知ったアビー&ブリタニー姉妹は胴体が全部くっついて、首は二本で頭は二つ・・・。

興味本位で検索してみたが、直視するのは気が引けます。

杏・瞬姉妹は、一つの身体に二人分の人格が存在しており(大小差はあるが脳も二つ)、両親も周囲にも認められているし、仕事を持ち通常通りに生活しています。

また、姉妹の伯父である勝彦は「胎児内胎児」というカタチで、自らの体内に弟(多分)である姉妹の父の勝彦を宿して誕生した~という、奇跡的な出生譚がある。

そのような連鎖はあるのか?。

荒唐無稽な医学ファンタジー?のような気もするが、実際にあり得る内容を描けるのは著者が消化器系医師だからでしょう。

そして、特殊?な姉妹でありながら世間に受け入れられている光景は、昨今のマイノリティー容認やジェンダーレスといった、比較しない社会を標榜しているような気がします。

 

本作はこれまで通り、文藝春秋で読みました。(芥川賞受賞2作品掲載でお得?)

もう一作も話題なので楽しみ。