バリ山行

第百七十一回芥川賞受賞作「バリ山行」 松永K三蔵

・・・バリエーションルート。バリルート。そんな言い方もするという。通常の登山道ではない道を行く。破線ルートと呼ばれる熟練者向きの難易度の高いルートや廃道。そういう道やそこを行くことを指すという。「でもちょっと珍しいルートでもバリエーションと言っちゃう人もいますし。逆に踏み痕も無くて、ルートにもなっていない沢沿いとか尾根伝いとか、地形図を見て登れそうなところ、行けそうなところを進んでいく完全ルート無視の山行(さんこう)~」そんなものを含めて指すこともあるという。・・・(P.392)

 

著者の名前からしてバリです・・・。

 

建物内外装修理の会社に勤める波多は、社内の登山サークルに誘われ参加~そこで社内ではアウトロー?の妻鹿(めが)と近くなっていくが~。

妻鹿はバリ専であり、低山(六甲山)への登山とはいえ、妻鹿に同行した波多は、あわや滑落!の危険な目に合ってしまう。

比較的?安全な登山道を外れ、バリルートに入ると様々な障害が立ちはだかる。

勤務先の経営状態や家族関係・・・よくある?様々な問題を登山に例えているのかもしれません。

 

・・・「会社がどうなるとかさ、そういう恐怖と不安感ってさ、自分で作り出してるもんだよ。それが増殖して伝染するんだよ。今、会社でもみんなちょっとおかしくなってるでしょ。でもそれは予測だし、イメージって言うか、不安感の、感でさ、それは本物じゃないんだよ。まぼろしだよ。だからね、だからやるしかないんだよ。実際に」(中略)「なんかねえ、バリやってるとそんなことを考えちゃうんだよ。で、それでも確かなもの、間違いないものってさ、目の前の崖の手掛かりとか足掛かり、もうそれだけ。それにどう対処するか。これは本物。どう自分の身を守るか、どう切り抜けるか。こんな低山でも、判断ひとつ間違えばホント死ぬからね。もう意味とか感じとか、そんなモヤモヤしたものじゃなくてさ。だからとにかく実体と組み合ってさ、やっぱりやるしかないんだよ」・・・(P.439)

 

妻鹿がバリルートで、目印のため木の枝に巻く「神戸タータン」のマスキングテープがあります。

青いタータンチェックの「神戸タータン」は以前、商店街視察研修で神戸・元町を訪れた際に知りました。

その際に神戸タータンのベルトを購入し、現役で使用しています。

バリルートに入った(陥った)際には、目印になるかも??。

 

読みやすく、藪を藻掻き進むバリを疑似体験出来ました。

やはり登山道を行くのがいいかと思います。