弥生朔日 貧困と脳
貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」 鈴木大介
・・・約束を破る、遅刻する、だらしない ― 著者が長年取材してきた貧困の当事者には、共通する特徴があった。世間はそれを「サボり」「甘え」と非難する。だが著者は、病気で「高次脳機能障害」になり、どんなに頑張ってもやるべきことが思うようにできないという「生き地獄」を味わう。そして初めて気がついた。彼らもそんな「働けない脳」に苦しみ、貧困に陥っていたのではないかと。・・・(本書カバー)
「脳をダマす」「脳を鍛える」・・・というフレーズを聞く機会があります。
「脳」をダマして自分が望ましいと思うように仕向ける~という意味で使われることが多いかと。
しかし、「自分」を司るのが「脳」だと思うが、その「脳」をダマすというのはどういうことだろう?思っていました。
脳=ハードウェア・思考=ソフトウェアということ?ハードウェアが低スペックだとダマしやすいのか?。
・・・と、ムタムタ考えてつつ読み始めたが、内容は、なかなかハードボイルド。
本書では、幼少期からの不適切な養育環境(マルトリーメント)の影響で、当人が情緒障害や発達障害に陥る可能性を指摘しています。
こうして障害のある「働けない脳」となって育つと、やがては次世代も同様な養育環境・・・負の連鎖へ。
本書を読んで様々な見方が変わったような気がします。
自業自得・自己責任・・・で、片づけられない存在もある。
ダメだ!と一蹴するのではなく、背後関係も考え理解しようとすることも大切かも。
なかなか難しいことではあるが。
著者自身もルポライター稼業の最中、脳梗塞を発症し脳障害を持ってしまったが、家族や周囲の支えで執筆活動を続けています。
・・・かつて取材で様々な話を聞かせてくれたヤクザが、「俺らにとって福祉とか制度みたいなものは、役人に頭を下げて小さくなってもらうもんじゃなくて、だまして奪い取るものだ」という、生活保護不正受給を叩くネット民が大喜びしそうなことを言ったが、「人の世の苦労を知らない役人風情にこうべを垂れてまで施しを受けたくない」というのは、幼き日から自助努力で生き抜いてきた者に共通する矜持でもある。・・・(貧困の正体)
元々の悪人や怠け者はいない・・・と思えてきました。