楽園の犬

「楽園の犬」 岩井圭也

・・・一九四〇年、太平洋戦争勃発直前のサイパン。日本と各国が水面下でぶつかり合う地に、横浜で英語教師をしていた麻田健吾が、南洋庁サイパン支庁庶務係として降り立つ。ここはあらゆるスパイが跋扈し、日本と他国との開戦に備え、情報収集をしていた。そして麻田もまた日本海軍のスパイという密命を帯びていた・・・。(本書カバー)

 

この「犬」とはスパイのこと。

スパイ活動には、敵国に潜んで機密情報を取得する「諜報」と、そうした諜者から機密を守る「防諜」があり、主人公の麻田はスパイを見つける「防諜」スパイとなった。

有名な海外スパイ映画・小説のような派手さは無いが、防諜対象者の機微を感じる描写が冴えます。

そもそも、スパイは目だったらダメ。

もしかしたら、こういう人物は現在でも、そして身近にも?。

麻田に「犬」になることを命じた堂本・海軍少佐と、その上司である宇城・海軍中佐の関係は?。

やがて「楽園」であったサイパンは「地獄」に~そして戦後の日本へ舞台は移る。

 

450ページ超の厚い文庫本ながら、スイスイ読み進められました。

スパイ小説ながら、シンプル(失礼)な展開で、どんでん返しもあまりありません。

しかし、令和の時代に戦争の悲惨さを伝えるには、程よい内容かと思いました。

リアルな「戦争」は、ネットから嫌でも入って来ます。