脂肪の塊
「脂肪の塊/ロンドリ姉妹」 モーパッサン 太田浩一 訳
・・・女のほうは、いわゆる玄人女のひとりで、歳のわりにでっぷりと太っているのが評判となり、ブール・ド・スュイフ(Boule de suif ⇒ 脂肪の塊(ボール) )というあだ名がついていた。小柄な、肥満した身体はどこもかしこも丸まるとしていて、ふっくらとした指が節々でくびれているところは、さながら短いソーセージを数珠つなぎにしたかのようだ。・・・(P.50)
かなり印象に残る題名しか知らない有名小説です。
その人物像が、しっかり脳裏に刻み込まれるようなリアルな描写で、読みながら雪の中を進む馬車の乗客に交じっています。
香水と汗と飲食物の匂いが混じるような混沌の中に。
ワイン問屋を営むロワゾー夫妻・綿糸業界の重鎮で上流階級に属するラマドン夫妻・ノルマンディー地方の名門 ユベール・ド・ブレヴィル伯爵夫妻・二人の修道女・上流階級と対立する民主主義者コルディネと、その連れブール・ド・スュイフ~個性的な乗客の面々。
普仏戦争の最中、馬車はプロイセン軍の侵攻を避けようと、雪の中をノルマンディー地方の街、ルーアンを出ようとするが・・・。
人間のエゴ・裏表・醜い面が浮き彫りに。
短編集で他にも「雨傘」「ロンドリ姉妹」が印象に残りました。(両作とも危ない?ヤバい?人物・家族が登場・・・)
各作品とも、現代社会でも十分通用します。
人は誰しも、イイもワルイも「脂肪の塊」。
決して不要なものではないが、身体に必要な脂肪と、そうではない余分な脂肪があるのでした。