千羽鶴
「千羽鶴」 川端康成
・・・そう気づいて菊治がほっと笑いかかった時、令嬢が二人うしろから急いできた。菊治は道をゆずるように立ちどまって、「栗本さんのお茶席は、この路の奥でしょうか。」とたずねてみた。
「はあ。」二人の令嬢は同時に答えた。
聞かなくてもわかっていることだし、令嬢のきもので茶室に行く路と知れているのだが、菊治は自分をはっきり茶会へ行かせるために言ったのだった。
桃色のちりめんに白の千羽鶴の風呂敷を持った令嬢は美しかった。・・・(P.15)
久しぶりの文学作品。
時代背景は昭和27~8年ごろかと思われます。
お茶会が催されたり国内旅行は自由にできるので戦後復興特需の真っ只中。
三谷菊治(主人公)・栗本ちか子・太田未亡人・太田文子・稲村ゆき子・・・複雑な人間関係に加え、時代を超えて受けつがれていく茶器が、各人の関係を織りなす。
それぞれが千羽鶴の鶴なのか。
美しくもドロドロ?した千羽鶴模様・・・どのような人物を思い描くのかは読み手にゆだねられる。
現代なら大炎上の内容ですが、なぜか美しい読後感。(登場人物含め想像)
物語りに登場する茶器の織部、志野、唐津、楽焼~とはどのようなものか?検索しながら読み進めました。
作られた当時から、様々な人の手を介し現在まで伝えらえた茶器の数々。
本物を拝見できる機会はないが、どのような茶器にも介した人の数だけ様々なドラマがあるのだろうな。
