「アフガニスタンの診療所から」 中村 哲

・・・本書の著者で、アフガニスタンで長年、農業用水路の建設など復興に携わってきた医師の中村哲さんが2019年12月4日、東部ナンガルハル州を車で移動中に何者かに銃撃され、お亡くなりになりました。心から御冥福をお祈りし、その志を、続く人々に残すためにも、心をこめて復刊させていただきます。・・・(本書帯)

 

テレビ等の報道で名前しか知らなかった著者の1984年から続く、アフガニスタンでの医療活動。

設備・薬品・スタッフも不足する中での壮絶な~現場、そして時にはフッと笑みが浮かぶような現地の様子が描かれています。

昨年末に著者が亡くなった際に、アフガニスタンは注目されましたが・・・既に新型ウイルス禍にかき消されてしまった。

 

・・・あまりに遠い日本には、ついにこの状況は伝えられることがなかった。(中略)じつはペシャワールからは多くのジャーナリストたちが自由にゲリラとともに往来していた。即席の従軍戦記の類が多く、ゲリラ勢力の勇壮な姿のみが大きく伝えられた。「シルクロード」の異国情緒と大差なかった。事実を伝えることさえ「売れる商品」に仕立てる風潮の中で、二〇〇万人近い死者を出した戦争が正確に伝えられなかった事実を、我々は知るべきである。・・・(P.99)

 

この内容は、1979年の旧ソ連軍のアフガニスタン侵攻から1988年の和平協定を経ての撤退までの間のことで、加えて600万人にも及ぶ、住む場所を追われた難民があり、現在もこの混乱は続き、ますます混迷・・・。

メディア非難をしても仕方がない。

国際組織の美辞麗句やあまり当てにならない国際支援をしり目に、目前の一人を救うため自らの使命として、果敢に取り組む姿に感銘を受けました。

 

その国々・地域には、長年に亘り培われた伝統と文化があります。

それに対し、支援と称して欧米流価値観と物品を押し付けることで齟齬が生じて、やがて反抗勢力へ・・・。

支援は難しい。

このような「現場」は、アフガニスタンだけでない。

 

遠く離れた場所からでも、我々に出来ることはあります。

自分流の支援を行おう。