「蝉しぐれ」 藤沢周平 を読む。

舞台は架空の海坂藩

映画化されているらしいが見ていません。

自分で勝手に思っている”藤沢ワールド”を堪能できたと思います。

 

主人公・牧文四郎の養父・助左衛門が、藩内騒動に巻き込まれて切腹を申し付けられてしまう。

その敬愛する養父との最後の面会を終えた後、親友の小和田逸平との会話がジ~ンとくる。

「泣きたかったら存分に泣け。おれはかまわんぞ」

「もっとほかに言うことがあったんだ」

文四郎は涙が頬を伝い流れるのを感じたが、声は顫えていないと思った。

「だが、おやじに会っているいる間は思いつかなかった」

「そういうものだ。人間は後悔するように出来ておる」

「おやじを尊敬していると言えばよかったんだ」

「そうか」

物語とはいえ、文四郎が十五才、逸平が十六才・・・。

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読みながら、文四郎自身になったり、時には外野から声援を送っていたりしました。

「秘剣村雨」の奥儀は、分からず仕舞いだが・・・。

 

安堵感に包まれ~ホッコリする、読後感。

歴史に名を残すような大人物ではなく、無名の下級武士や市井の人々が織りなす、人情味あふれる物語は、藤沢作品の王道ですね。

 

ちなみにこの本は、書店の新古本コーナーで見つけました、140円也!。

新古本とはいえ、とても新鮮な味わいがあったのでした。