「山椒魚」 井伏鱒二

・・・山椒魚は悲しんだ。彼は彼の棲家である岩屋から外に出てみようとしたのであるが、頭が出口につかえて外に出ることができなかったのである。今はもはや、彼にとっては永遠の棲家である岩屋は、出入口のところがそんなに狭かった。そして、ほの暗かった。強いて出て行こうとこころみると、彼の頭は出入口を塞ぐコロップの栓となるにすぎなくて、それはまる二年の間に彼の体が発育した証拠にこそなったが、彼を狼狽させ且つ悲しませるには十分であった。・・・

 

教科書にもある、有名な冒頭を覚えていることもあり読んでみました。

表題を含めて12作の短編集です。

物語の背景が大正から昭和初期の作品を読むと、当時の生活感や風俗が描かれていて興味深い。

物事がゆっくり進むが丁寧でもあると思います。

 

冒頭の山椒魚の様子は、かわいそうでもあるが、何故そうなるまで気が付かなかったのか?とも。

山椒魚は、もともと活発に動く生物ではないが、人間模様にもたとえられるかもしれない・・・。

その後、人間か何かによって岩屋から発見されるといいが、それはそれで捕獲されたりと~どうなることか。

当時の世相を描いているような気もします。

 

このように読書出来る環境はありがたい・・・とも思った。