「わたしたちが孤児だったころ」 カズオ・イシグロ

・・・上海の租界に暮らしていたクリストファー・バンクスは十歳で孤児となった。貿易会社勤めの父と反アヘン運動に熱心だった美しい母が相次いで謎の失踪を遂げたのだ。ロンドンに帰され寄宿学校に学んだバンクスは、両親の行方を突き止めるために探偵を志す。やがて幾多の難事件を解決し社交界でも名声を得た彼は、戦火にまみれる上海へと舞い戻るが・・・。(本書カバー)

 

英国の伝統的な寄宿学校・過去と現在・家族関係、そして戦争・・・今まで読んだカズオ・イシグロ作品に共通するテーマが詰まっています。

英国の黒歴史?ともいえるアヘン流通の担い手だった時代の中国・上海が舞台。

フランスもオランダ、そして日本も中国各地を蹂躙していたが、それが国勢拡大の手段だった。

「租界」と呼ばれる場所は、当時の先進国同様の生活ができ治安も保たれていたようです~戦火が及ぶまでは・・・。

血迷ったか?のように日本軍と中国軍との市街戦渦中に飛び込んでいったバンクスの行動は、冷や冷やもの~身勝手・無謀過ぎ、自業自得です。

そんな中で旧友のアキラと再会したり、危機を回避できるのは出来過ぎ・・・だったが、戦場描写がリアルでニュース報道で見るウクライナや中東の光景と重ねていました。

戦争原因をたどっていけば、行き着く先は・・・植民地支配・・・我欲・・・資本主義経済なのか。

 

戦火を交える日本軍と中国軍は、本書中では平等に扱われていたと感じました。

当時中立的立場だった、英国人バンクスの視線だったからかもしれないが。(作者の視線でもあるか?)