月別アーカイブ: 2023年1月
大衆化
2023年1月15日 ブログ
日経紙連載「レッドオーシャンの名画」十選(6)
ヨハネス・ファン・ソーメル「歳の市の版画売り」(1655年~1700年)
・・・歳の市では、様々な品物に交じって、絵画や版画を売る店も並んだ。(中略)大規模に展示・販売する場もあれば、幼い子供が小遣いで買えるような版画を売る小屋掛けの小さな店もあった。・・・
年末の風景(歳の市)は、洋の東西や時代を問わなかったようです。
新年を迎えるにあたり、室内を飾るための絵画や版画を求める人々。
版画は大量生産できるし、美術品の大衆化に一役かったのでしょう。
レッドオーシャンを大衆化(安価)で乗り切る。
美術の裾野を拡げて市場も大きくすることで、様々な絵画・版画が売れるようになった。
価格競争はよくないが、市場拡大のためには必要な面もあったのだなー。
富と名声を得たが・・・
2023年1月14日 ブログ
日経紙連載「レッドオーシャンの名画」十選(5)
レンブラント・ファン・レイン「マルテン・ローテンの肖像」
・・・市場に大量の絵画作品が出回ると、画家と購入者・発注者とを取り持つ画商が活躍し始める。たとえば、ヘンドリック・ファン・アイレンブルフは、ライデンから出てきたばかりのレンブラント・ファン・レインに肖像画の制作を次々に斡旋したが、その際、注文をこなす工房まで構えた。・・・
レッドオーシャンで生き残るためには、才能に加えて有力な協力者も必要です。
きめ細かな注文を的確に画家に伝える~営業センスが問われますねー。
そのおかげでレンブラントは人気の肖像画家へ~しかし、順風満帆の時に魔が差すのが世の常なのか?。
絵画資料として様々な物品を購入し~やがて晩年は金策に苦労したようです。
・・・レンブラントは妻の親戚でもあったファン・アイレンブルフの下からやがて独立し、数々の傑作をものにしていくが、一方で、この画商と袂を分かったことは、その後、レンブラントの人気が陰っていく一因となっていく。・・・
レッドオーシャンで優位に立っても、競争相手が虎視眈々とその地位を脅かして来るのでした。
我欲との戦いも。
安息の時間がどんどん減っていくのだろうなー。
レアもの欲しい
2023年1月13日 ブログ
日経紙連載「レッドオーシャンの名画」十選(4)
へーラルト・テル・ボルフ「身支度をする女」(1660年頃)
この絵に描かれた、家具・調度・衣装・装身具・使用人の存在を漂わせる余裕ある暮らしは、そのレベルに手が届く者を意識しているとあります。
同時に高価な青色顔料(天然ウルトラマリン)が使用され、作品の貴重度を高めたことも購入者には魅力だった。
貴重な存在~誰しもが手に入れられない物品を所有することで得られる満足感・優越感。
現代ならば有名ブランド品の中でも、限定品とか数量が限られたレアものを求める心理と同様でしょうか。
自己満足?高価な品ほど人気が高い。
絵画の場合はそれを飾るにふさわしいお屋敷が必要です・・・。
人間も?。
・・・購買者のニーズを正確に捉え、その求めを先取りすることは、画家にとって、市場を勝ち抜く最も有効な指針となった。もちろん、画家の方に、それを実現するだけの高い腕前が備わっている、という前提付きの話ではあるが。・・・
気まぐれロボット
2023年1月12日 ブログ
「気まぐれロボット」 星新一
・・・おなかがすいたら料理をつくり、あとかたづけに、へやのそうじ、退屈すれば話し相手に。なんでもできるロボットを連れて離れ島の別荘に出かけたお金持ちのエヌ氏。だがロボットはしだいにおかしな行動を・・・。(本書カバー)
「ボッコちゃん」と同時に入手した、星新一のショートショート作品です。
作品が書かれた1970年代から見た未来は、ロボットが豊かな生活の担い手になるハズ?だった。
変わった発明品やアイデアを生み出す、博士とその知人が巻き起こす珍エピソードや、よくばり過ぎた残念なワルモノが登場。
このショートショートは、児童向けのようでブラックな話題は無かったですねー。
絵本を読んでいるような(見ているような)ふんわりとした雰囲気があります。
表紙や挿絵も愛らしい。
昭和ノスタルジーにひたれました。
似てないけど似ている
2023年1月11日 ブログ
日経紙連載「レッドオーシャンの名画」十選(3)
ヨハネス・フェルメール「手紙を書く女」
・・・17世紀オランダで人気を博した絵画主題の一つに「手紙を書く女」がある。描かれているのは、当時の「最先端」の女性たちだ。・・・
記事には「手紙を書く女」を主題とする作品には類似したものが多い~とあります。
・・・激烈な競争下にある市場を生き抜くため、画家たちは、細部に少し手を加えつつ、人気の型を市場の需要が尽きるまで、競うように描き続けた可能性が高い。・・・
文字通りのマネはダメだが「似てないけど似ている」には寛容?だったらしい。
「同じ旋律で異なる歌を歌う」~との表現も。
ネット上で「手紙を書く女」を検索したら、たしかに似たような絵画が出てきます。
現代社会でコレをやってしまうと大炎上してしまうが、17世紀ではライトなグレーゾーンだった。
レッドオーシャンの中にも、生存域としてのグレーゾーンはあるが・・・やがて飲み込まれていくのか。
朱に交われば赤くなる~結局はレッドオーシャンは過酷。
チップス先生、さようなら
2023年1月8日 ブログ
「チップス先生、さようなら」 ジェイムス・ヒルトン 白石朗訳
・・・霧深い夕暮れ、暖炉の前に座って回想にふけるチップス先生の胸に、ブルックフィールド校での六十余年の楽しい思い出が去来するー。腕白だが礼儀正しい学生たちとの愉快な毎日、美しく聡明だった亡き妻、大戦当時の緊迫した明け暮れ・・・。
よくあるタイトルしか知らない小説です。
薄い文庫本で助かった!?。
そんなに有名ではないが、パブリック・スクール(一応)であるブルックフィールド校にやってきたのが、「それなりに一目置かれはするが、決して傑出した逸材ではない」アーサー・チッピング(チップス)先生。
時に1870年。
当時のイギリス~ヨーロッパの情勢については、ほとんど知らなかったのですが激動期に向かっていたのでした。
日本国内(明治初年ごろ)も同様ですねー、世界中が大きく動き出していた。
古き良き英国が最後に輝いた時代?。
そういった時代背景を理解しながら読めると、チップス先生の回想はより深いものに感じられたでしょう。
以前にパブリック・スクールについて書かれた新書を読んだことがあります。
チップス先生のような教師は珍しかったのでしょうか。
ラテン語のジョーク・・・高等過ぎてワカリマセン。
罰としてのムチ打ちとか・・・今でもある?。
古き良き時代(大英帝国?)~さようなら・・・。
トレンド・セッター
2023年1月7日 ブログ
日経紙連載「レッドオーシャンの名画」十選(2)
フランス・ファン・ミーリス「医師の訪問」(1667年)
・・・17世紀オランダの美術市場は、競争相手、競合作品であふれていた。そんな中、人気画家をトレンド・セッターと見定め、生き残りをはかる画家が出ても不思議はない。匿名の人々の日常を描いた風俗画の領域ではフランス・ファン・ミーリスが目指すべき手本となった。・・・
トレンド・セッター ⇒ 流行に敏感で、いち早く流行を先取りすること。
この画家は細密な画風、華のある画様が特徴だそうです。
そして富裕なパトロン、貴顕(身分が高く名声もある)コレクターが垂涎の的にしていたという・・・だから、高価で取引され、それがエスカレートしていく。
この様式、主題、画風を真似る画家も現れることで、さらに本家画家の評価が上がり、同時に価格も上がる~のくり返しだったと思われます。
レッドオーシャンで浮かび上がるには、唯一無二を目指すことが大事なんですねぇ。
唯一無二~でも自己満足じゃダメなんだなー。
レッドオーシャン
2023年1月6日 ブログ
「レッドオーシャンの名画」十選(美術史家 小林頼子)~年始から日経紙で掲載。
レッドオーシャン(苛烈な市場)~という言葉に惹かれました。
・・・画家も作品も、市場の容赦ない選別と序列化に晒されていた。美的対象である芸術作品の価値は金額に換算しがたいが、歴史のある時点から、有無を言わさぬ需給の原理に左右される商品となったのである。・・・
どんな絵画が、なぜ生き残っているのか?~何か得られるものがあるでしょうか?。
へ―ラルト・ダウ「若い母親」1658年作
正直言って陰気くさい絵だなーが第一印象です。(^-^;
絵画を語る素養の欠片もない感想・・・。
なぜ高評価なのか?実物だと見方が変わる?美術館に収蔵されているから?。
冒頭から「レッドオーシャン」に飲み込まれています。
日本人はなぜ科学より感情でうごくのか
2023年1月4日 ブログ
「日本人はなぜ科学より感情で動くのか」世界を確率で理解するサイエンスコミュニケーション入門 石浦章一
・・・ワクチン、原発、遺伝子組換え・・・知らない人ほど怖がりすぎている。テレビやネットに踊らされるないための科学リテラシー人気講義・・・。
タイトルに「日本人」とありますが、人間は~ですね。
国内では原発、コロナワクチン接種といった直近の出来事が印象的なので、こういうキャッチーなタイトルにしたのかと。
あと、血液型性格判断が好きだからでしょうか。
何でもかんでもわかっているような現代科学にも、グレーゾーンがあるということのようです。
でも、牛肉を食べるのは控えようかな?とチョッと思った・・・へなちょこ感情野郎。(^-^;
よくある陰謀論も冷静に分析すれば正体が分かる。
科学~理系分野も読解力・文系能力が求められます。